ラオスの安井清子さんから、元難民のモン族の人びとが暮らすシヴィライ村からの便りが届きました。
by laospantao


若者たち

 数か月前、村の高校最終学年、7年生(ラオスは中学、高校を連続して学年を数える)の女の子、イェンから電話をもらった。
「きよこ、今じゃないわよ。6月の試験前に、どうしても試験代がいるの。今から刺繍を作ってためておくから、その時、まとめて買ってね。そうじゃないと、私、試験代がないの」
 ラオスでは、学年末試験、特に高校の卒業試験、その他もろもろの手続きなどに、結構お金がかかる。もちろん、日本に比べたら大した金ではないかもしれないが、村の人たちにとっては負担が大きい。その上、イェンの両親が二人とも、昨年、相次いで病気になって、治療にお金がかかったので、イェンのために試験費用などを出してあげられない状況なのだ。

 つい先日、イェンは、「そろそろ試験だから、刺繍を持っていきたいんだけど…」と、やはりシヴィライ村に住む親せきの女の子ギーと、ギーの弟のヌンと一緒にやってきた。 ギーのことは小さい時から知っているが、今はもう2人の子のお母さんになっている。

「これから焼畑の畑に陸稲を植えるの。でも、雑草がひどくて、除草剤を買わないと、とても植えることができないのよ」と言う。刺繍を売ったら、除草剤を買って帰るのだ。
「今年は、水がなくて大変だったわ。お金がある人は、飲み水のタンクを買えるけれど、私たちはお金がないから、湖の水を沸かして飲んでいたのよ。やっと雨が降り出して、助かったけど…」と。ギーは顔も声も小さい頃と変わらず、かわいらしいのに、人生の辛苦を知る大人になった。

 イェンは、同じ高校生最終年の弟、高校1年の弟、中学2年の妹…みんなで一生懸命作った刺繍を私の前に広げた。
「みんな試験代がいるのよ。きょうだい全員が頑張って作った刺繍よ。うちは、昨年1年、親が病気ばっかりしてたから、私たち子どもたちが自分で何とかしなくちゃいけないの…」と早口で言う。
「そりゃ、進学はしたいけど、どうなるかわからないわ」
ここまで頑張って勉強してきたのだから、それは上に進みたいだろう。でも、試験の結果次第と、やはり進学するにはお金がいる。
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左からヌン、イェン、ギーです。うちを訪ねてきた時に撮った写真

「今日、私たちは、弟のヌンのアパートに泊まるのよ。せっかくビエンチャンに来たのだもの。久しぶりにゆっくり弟とも話したいの」
とギーが言った。そこで、私も一緒にヌンのアパートへ行ってみた。ヌンは、2年ほど前、村から出てきて、ビエンチャンのフゥ屋(そばや)で働いている。繁盛している大きな店だ。同じ店で働く同僚7人で、6畳ほどの大きさの部屋で共同生活をしているのだという。車が行きかう喧騒な大通りに面して並ぶ華やかなショッピング街のすぐ後ろにその小さな長屋アパートはあった。

「店まで歩いて行って、働いて、それで歩いて帰ってきて、ここで寝るんだ。夜、暑いけどね、仕方ないよ」と。

 山の村とは全然違う環境の中で、黙々と働く青年。
 若者たちは、親の代とは違う新しい生活に、一人ひとり向かい合っている。
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ヌンのアパートで。左からギー、イェン、ヌン

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ヌンの住む長屋アパート
by laospantao | 2013-05-11 23:07
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