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ラオスの安井清子さんから、元難民のモン族の人びとが暮らすシヴィライ村からの便りが届きました。
by laospantao


図書館のジェお父さんの話

シヴィライ村の図書館のスタッフをやっているジェは、もう5人の子どものお父さん。彼は、自分の子どもだけでなく、図書館に来る子どもたちにも優しい。小さい子どもたちが、「お話して、お話して」と言われると、いかにも楽しそうにお話してやるし、中学生たちにも慕われている。

「ぼくは、自分の子どもたちに、ぼくみたいな貧乏暮らしじゃなくて、親を超えて育ってほしいと思っているんだよ。ぼくはね、両親が貧しかった。7人女、7人男の14人きょうだいだからね…」

 ジェは上から3番目だ。小学生の時にタイの難民キャンプからラオスへと戻ってきた。小5を卒業し、中1に進んだ。でも、その時は中学が村にはなかった。通おうにも自転車もなかった。友達の自転車の後ろに乗せてもらったり、お母さんから、乗り合いバスに乗るお金をもらったりして、1週間ほど中学に通った時だった。

「うちは貧しくて、食べる米もなくてね。お父さんが森で掘った山芋を主食にしていたんだ。でも、その時、お父さんは間違えて毒のある山芋を掘ってきてしまって、それを食べた妹が死にかけたんだ。お父さん自身も食べた。学校から帰ってきて、具合の悪い妹とお父さんを見て、ぼくは学校へ行くのをあきらめた。学校へ行くのにかかるお金を米代にまわせたら、妹だってそんな目に合わなかったわけだし、たくさんいる弟や妹たちのために畑仕事をして、食べさせてやらないといけないと思ったからだよ」

 ジェは続けた。
「ぼくはさ、成績悪くなかったんだよ。いつも、クラスで1番か2番か3番か…で、今、このシヴィライ中学の先生になっている同級生よりも成績がよかったんだ。だから、もし学校を続けていたら、何か職についていたと思う。でもね…事情が許さなかったんだ。今でも残念だけど、仕方ない。だからね、ぼくは、自分の子どもたちにはちゃんと勉強して、自分で道を開いて行ってほしいんだよ」
とジェは言った。

 週4日、図書館の仕事をして、あと3日は畑仕事…今年の稲刈りも終わったばかりだが、まだ1年分に足りるかどうかはわからない。稲刈りが終わった途端、身体を壊して、病院に運び込まれた…と言う。図書館の仕事で時間をとられてしまう分、かなり無理しているのだろう。それでも、図書館の仕事を続けているのは、「勉強をして、自分たちの境遇を超えてほしい」という子どもたちに対する願いが心の中にあるからなのかもしれない。

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by laospantao | 2012-11-16 00:00
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